毎年 タブラのために インドをおとずれているユザーン
そして 日本国内のライブでも やっぱりカレーをふるまわれることが 多いのです

ユザーンのカレー指数は 半端ない!
これはもう タブラ奏者の宿命です

そんな ユザーンカレーデータを 放っておくのはもったいない!

というわけで そんな 数々のカレーを食してきた ユザーンがオススメする
あえて食べたいカレーを ゲストミュージシャンと巡る会 が発足しました

カレーは 1人より みんなで食べる方が いろいろ食べれて たのしいもんね!

9番目の会員は 生粋のベンガル人 BABUI
サロードの素敵な音色でアルバムを締めくくってくれた彼と
カルカッタ市内に 何店舗かの系列店を持つ
大人気ベンガル料理店 Kasturi Restaurant で
いろいろなベンガル料理を 食べてきました

Babui(以下B):ごはんをご馳走してくれるのは嬉しいんだけどさ。 U-zhaan(以下U):うん。 B:なんでベンガル人の俺をベンガル料理屋に連れてくるんだよ。 U:しょうがないじゃん、ここはベンガル地方なんだから。 B:せっかくだから寿司とか食べたいのに。 U:やっぱり普段からベンガル料理ばっかり食べてるのかな。 B:家にいるときはだいたいそうだね。 U:あれ、でもバブイの奥さんってフランス人でしょ。
毎日バブイが自分で作ってるの?
B:いや、ベンガル人のコックを雇ってるから。 U:コックさん! 金持ちだね。 B:金持ちとかじゃなくて、妻も夜までオフィスで働いてるしさ。この国では状況に合わせて人を雇ったほうが逆に経済的なんだよ。 U:たしかにそうかもね。ところで今日は何食べる? 好きなもの注文していいよ。 B:お前が選べよ。俺、この店に来るの初めてだし。
U:じゃあまず、チングリ・マライ(※1 ココナッツを使ったエビカレー)を頼もう。
あと、せっかくベンガル料理屋だし魚も食べようよ(※2 ベンガル地方では魚料理が名物)。どの魚が好き?
B:ベトキー(※3 脂が乗っておいしい白身魚。骨も少なくて食べやすい)かな。
ベトキーだとどんな料理ができる?
ウェイター:バパ(※4 ココナッツやマスタードオイル、芥子の実などを使った
クリーミーなカレー)とかパトゥリ(※5 マスタードの種・ココナッツ・
青唐辛子などのペーストで包んだ魚をバナナの葉でラップして焼いた料理)
とかがオススメです。
B:ベトキー・バパがいいな。 U:肉も食べよっか。マトンとチキンどっちがいい? B:チキンかな。チキン・ブナ(※6 水気を飛ばしたスパイシーなチキンカレー)にしようぜ。 U:モチャ(※7 バナナの花)ってありますか? ウェイター:モチャル・ゴント(※8 バナナの花のドライカレーみたいの)ならできます。 U:じゃあそれを。あとダール(※9 レンズ豆のスープ)とアールー・バジャ(※10 インド式フライドポテト)。シュトゥキー・マーチ(※11 魚の干物。クサヤみたいな臭いがする)もお願いします。
B:シュトゥキー・マーチか! それ頼むなら白飯も必要だな。 U:バブイはシュトゥキー・マーチ好き? B:ちっちゃい頃は大嫌いだったね。あの発酵臭が耐えられなかった。でもある日ふと食べてみたら、突然シュトゥキー・マーチのファンになったよ。 U:へー。俺も最初は「これ、食べちゃダメなやつなんじゃないかな」と思ってたね。あ、注文は以上でいいかな。 B:じゅうぶんだろ。 U:ベンガル料理ってさ、インド国内の他の地域と比較したときに特徴はどんな感じなの? B:インド国内に大きく広げるよりも、まず西ベンガルと東ベンガルにわけて
考える必要があるかな。さっきお前が注文したシュトゥキー・マーチは主に
東ベンガル、つまりバングラデシュのほうの食材だ。イリッシュ
(※12 ベンガル地方の高級魚。やたら小骨が多くて、味はサバに似てる)
も元々はバングラデシュから来たものだよ。
U:そうなんだ! B:料理法は全然違うんだけどね。ここカルカッタに代表される西ベンガル地方では
マスタードを使ってイリッシュの味付けをすることが多いけど、バングラデシュでは
ニンニクをいっぱい使って独特な風味を出す。
U:食べたことある? B:あるけど、俺の口にはあんまり合わなかった。まあ、何度も食べるうちに好きに
なったりするのかもしれないけど。
U:東ベンガル出身の人もカルカッタにはいっぱい住んでるよね。
調理法が西と東でミックスされていったりはしないの?
B:もちろんそうなってきてるよ。この店のメニューにだって東西のベンガル料理が混在してるし。
ただ、家庭料理を食べるとその家のルーツがカルカッタにあるか、それともバングラデシュにあるかがやっぱりわかったりする。
ほんの少しの違いなんだけどね。
U:へー。 B:音楽だってそうだろ。お前は最初、カルカッタでオニンドダー(オニンド・チャタルジー)からタブラを習いはじめた。
そのあとザキールジー(ザキール・フセイン)のところでどんなにレッスンを受けても、オニンドダーのフレーバーはいつでもお前の演奏から漂ってる。
U:それはわかりやすい例えだね。 B:だろ(笑)。俺の師匠のアリ・アクバル・カーンは、いつも音楽を料理に例えて教えていたんだ。「塩をこのくらい入れて、唐辛子はここで投入して」みたいな過程を経ておいしい料理ができ上がってくるのは、インド音楽を演奏している中でラーガ(※13 インド音楽における、音列のようなもの)が美しく立ち上がってくる感じと一緒だ、と言って。 U:なるほどね。ところで、バブイは自分でも料理するの? B:するよ。何でも作れるから、今度ご馳走するぞ。 U:え、じゃあショルシェ・マーチ(※14 マスタードペーストで調理する、ベンガル地方を代表する魚料理のひとつ)がいい! B:ショルシェ・マーチは無理。作ったことないし。
U:そうなの? ジャックフルーツのカレーとかは? B:それもできないな。 U:何でも作れる、って言ったの誰だよ。 B:大丈夫、コックがいるから。ウチのコックは料理うまいぞー(笑)。 U:お、そんなこと言ってるうちにシュトゥキー・マーチが来たね。
バブイのお皿に取り分けようか?
B:まだ要らない。シュトゥキー・マーチは食事の最後に食べるものなんだ。 U:そういうルールがあるの? チングリ・マライも来たけど。 B:それも後にするよ。 U:じゃあもう好きな順番で勝手に食べてよ。
あれ、なんか頼んでないのが来たね。
ウェイター:これは自慢のメニューなので、店からのサービスです。 B:コチュ・チングリ(※15 タロイモの葉っぱとエビの炒め煮)だな。
これとダールから食べるか。
……うん、ダールがさっぱりしてていい感じだね。
U:この小エビのやつ、初めて食べたけど上品な味だな。
あ、バブイもやっぱり手で食べるんだ。
B:手で食べたほうがうまいだろ。スプーンを使うと、
食べ物がちょっとスプーン風味になるし。
日本人も食事は手で食べるといいよ。
U:日本食は箸で食べる用にできてるんだって。
お、このベトキーうまい! 魚も上質だし、フレーバーもすごくいいし。
B:うん、これはちゃんと作ってあるな。注文したのは俺だぞ。 U:わざわざ言わなくても知ってるよ(笑)。もうちょっと白いごはんを頼んだほうがいいかもね。すみません、ごはんください。あ、チキン来たよ。取る? B:魚を食べちゃってからにするよ。まず野菜や豆、その後に魚料理という順番で、肉は最後に食べるんだ。でもシュトゥキー・マーチは味が強いから肉の後に食べる。 U:そうそう、この辺の人はあんまりカレーを混ぜないんだよね。南インドとかに行くとみんな盛大に混ぜて食べてるけど。 B:ベンガル料理は単独での味を楽しむように味付けしてあるから、ライス以外のものとはお皿であんまりミックスさせない。それにしても、やっぱりこのベトキーはいい味付けだね。 U:ひとつでも気に入ってよかったよ。この店のチングリ・マライもうまくない? B:エビは大きくてジューシーだし、ソースにもきっちりとエビの味が出てておいしい。チキンもリッチな感じでなかなかだけど、個人的にはもっとシンプルな汁っぽいやつのほうが好きだな。 U:自分で選んでこっちをオーダーしたんじゃん! じゃあモチャはどうだった?俺、モチャがすごく好きなんだけど。 B:これもちょっと水気を飛ばし過ぎかね。パサパサしてる。俺んちの母ちゃんならもっとうまく作れるぜ。
U:そうなんだ。じゃあ最後にシュトゥキー・マーチを食べてみてよ。 B:これは塩が足りないのか、多少ぼやっとした感じの味付けになってる。
もうちょっと塩を入れたほうが味にコントラストが出ると思う。
きっとウチの母ちゃんならそうするよ。
U:じゃあもうバブイの母ちゃんとこでメシ食おうよ(笑)。
Sougata Roy Chowdhury a.k.a. Babui
1973年生。10歳よりUstad Ali Akbar Khanの息子であるDhyanesh Khanにサロードを師事。
Dhyanesh Khanの早逝後は彼の兄であるUstad Aashish Khanの元で研鑽を積んだ。
現在はコルカタ在住のシタール/スルバハール奏者のPandit Santosh Banerjeeに師事している。
サロード奏者として公式にデビューをしたのは1994年。現在はヨーロッパやアメリカ、
もちろんインド国内も含めた世界中で活動を続けている。
2011年には、東日本大震災義援金募集プロジェクト「DIY HEARTS」に、Babui & U-zhaanとして楽曲「へまんと」を提供した。

  • BABUIにも参加してもらった
    ↓ユザーンのアルバムのページです↓
  • Kasturi Garden Restaurant
    バブイはちょこちょこ注文を付けるけれど、 とてもおいしいお店なんですよ! 11/A, Dover Lane, Hindustan Road, Rash Behari Avenue, Kolkata, INDIA