毎年 タブラのために インドをおとずれているユザーン
そして 日本国内のライブでも やっぱりカレーをふるまわれることが 多いのです
ユザーンのカレー指数は 半端ない!
これはもう タブラ奏者の宿命です
そんな ユザーンカレーデータを 放っておくのはもったいない!
というわけで そんな 数々のカレーを食してきた ユザーンがオススメする
あえて食べたいカレーを ゲストミュージシャンと巡る会 が発足しました
カレーは 1人より みんなで食べる方が いろいろ食べれて たのしいもんね!
カレーばっか食べる会。会員ナンバー8番 ハナレグミの永積 崇くん
夏の終わりに 素敵なアルバムを リリースしました
おめでとうございますー ということで
御徒町アーンドラキッチンで お祝いのカレー会です
U-zhaan(以下 U):飲み物どうする? 永積 崇(以下N):俺はやっぱりハイボールにしようかな。 U:まだハイボールに操を立ててるんだ! 角ハイボールのCMで崇くんが
「ウィスキーが、お好きでしょ」を歌ってから、もうだいぶ経つけどね。
もともとハイボールが好きだったの? N:いや、あのCMで初めて知った感じ。でも俺「家族の風景」って歌を出した頃
から、どうも周りの人からウィスキーが好きだと思われてるらしくて。 U:冒頭の “キッチンには ハイライトと ウィスキーグラス”
っていう歌詞が印象的だもんね。 N:実際には親父が一人でときどき飲んでただけなんだけどさ。
ハイライトを吸ってたのも親父で。しかも、あろうことか母親が
キッチンドランカーなんじゃないかっていう周囲の誤解すら招いたらしい。 U:あはは! お母さんが、ウィスキー片手にくわえタバコで料理してるんじゃないかと
思われたんだ。それはそれでかっこいいけど。 N:誰かから母親が言われたみたいなんだよね。
実家に帰ったときに「私ってそんな母親像だっけ?」って聞かれた。 U:いい話だね。あ、ハイボールきたよ。じゃあ乾杯! おめでとう! N:ありがとうー! U:今日は崇くんのアルバム発売を祝う会だからね。プロモーションも兼ねて。
N:前代未聞だよね。ミュージシャンが自分のホームページで人のアルバムの宣伝を
するっていう。ユザーン、今回は参加もしてないのに(笑)。 U:いや、崇くんが「またいつか “カレーばっか食べる会” に呼んでほしい」ってメールくれてたから、せっかくならこのタイミングがいいかなと思って。
ところで、前回のこの会で経堂のガラムマサラへ行ったとき、崇くんがタンドリー・ラムをすごく気にいってくれたの覚えてる? N:もちろん覚えてるよ。あれおいしかったなー。 U:今日はそれを踏まえて、俺が日本で一番うまいと思うラム・チョップを食べに来たの。 N:うわ、楽しみすぎる! U:もうラム・チョップは予約注文してあるから、ひとまず新しいアルバムの話をしようか。4年振りだっけ?
N:そう。あいだにカバーアルバムは1枚出したけど、オリジナル作品は2011年の『オアシス』以来。 U:崇くんにとっての4年間が、ぎっしり詰まってるような印象を受けるアルバムになってた。歌詞も曲もいろんな人が書いてたりするのに、どの曲も崇くんらしくて。 N:うん、おとといもKING(YO-KING/真心ブラザーズ)と洋次郎(野田洋次郎/RADWIMPS)と3人で飲んでてそんな話になったな。 U:あー、洋次郎くんの「おあいこ」も素晴らしかったよ!あと、池ちゃん(池田貴史/レキシ)が参加してる曲もおもしろかったね。
“メンフィスジャクソン ニューオリンズ” って、いかにもブルースっていう街の名前を並べた歌詞から始まるやつ。 N:「フリーダムライダー」だね。 U:あの曲を聴いて、崇くんがブルースにハマりまくってた時期のことを思い出した。
実際に、しばらくニューオリンズに行ってたよね? N:それはあれだよ。ユザーンに「もっとギターがうまくなりたいんだけど
どうしたらいいかな」って相談したら、
「日本でギターのうまい人に教えてもらうとかよりも “ヨレヨレな格好の
おじいさんだけど、ギターを持たせたらめちゃくちゃかっこいい”
みたいな本物のブルースマンを現地で探して直接習ったほうが
崇くんにはきっといいよ」って言ってくれたじゃない。 U:あー、そんなことあったね。 N:なるほどなと思って、すぐ行動に移したの。 U:結局ブルースマンは見つかった? N:そんなおじいさんは一人もいなかった。 U:あれ、道端で哀愁を漂わせながらむせび泣くようなギターを聴かせてくれる人とかいっぱいいるんじゃないの? N:いるにはいるんだけど、俺よりもずっと若い人ばっかりなんだよ。なんかみんなチャラチャラしてさ。タトゥーがいっぱい入った肌を見せながら昼間から泥酔してる白人ギタリストとかしか見当たらないから、ちょっと教えを請うような感じじゃなかった。 U:えー、俺たちがイメージしてるブルージーな文化はもうないんだ。 N:そういう人たちはもう端に追いやられちゃってるみたいだったね。でもやっぱり「俺が求めてるのはこんなんじゃない」って思いながらいろいろ探してたら、そういう古くからやってる人達が集まって結成したビッグバンドが毎日演奏しているっていうバーの話をやっと聞きつけて。もうそれは観に行かなきゃまずいだろ、と。 U:お、旅に希望が見えてきたね! N:で、タクシーに乗ってそこへ向ったんだけど、運転手さんが「おい、あそこにマジで行くのか。よく考えたほうがいい」って言うんだよね。どうやらだいぶ危ない地域らしくて。それでも行く、って伝えたら「なにかあったらここに電話しろ、俺が迎えに行くから。歩いて帰ったりしたらやばいぞ」って電話番号を渡された。
U:そりゃビビるな。俺だったらそのままタクシー乗って帰るね。 N:だけどせっかくここまで来たんだし、と思いながら恐る恐る扉を開けてみたら、意外にみんなフレンドリーだったの。「おー、入りなよ入りなよ」って優しく話しかけてもらってるうちに「俺の求めるニューオリンズはここにあった!」と思って嬉しくなって。 U:へー。演奏はどうだった? N:それがさ、ビッグバンドの人たちがみんなでずっとテレビ画面を食い入るように観てるんだよね。どうしたんだろう、と思いながらカウンターの女の人に「演奏って何時ぐらいから始まるんですか」って聞いてみたの。そしたら「今日はアメフトの大きな試合の中継があるから誰もライブなんかやらないよ」という返事が来て。
U:それで崇くんはどうしたの? N:知らない黒人のおじさんとアメフトを観て帰ってきた。 U:えーと、その街で崇くんが得たものは結局なんだったんだろう。 N:イメージだけで行くと痛い目に合う、という教訓かな。 U:なんかニューオリンズ行きを勧めちゃって悪かったね(笑)。 N:でもまだ滞在が5日も残ってたから、残された時間を大事に
使わなきゃいけないと思って。ニューオリンズではもう何も
見つけられなさそうだったんで、メンフィスに行くことにしたの。 U:メンフィスもブルースが盛んな街だったの? N:「スタックス・レコード」とか「サン・レコード」みたいな昔の
名門レーベルがあったりしたから、
まあちょっとバスに乗って向ってみようかと。
で、実はその旅に出る直前にフリーダムライド運動についての本をずっと読んでたのね。
フリーダムライド運動ってのは、公共交通機関の座席が白人用と非白人用に分かれたりしてた当時の人種隔離政策に対する抗議として、白人と黒人が横並びにバスに座ったりしていた公民権運動のことなんだけど。そして俺が読んでたその本に登場する町並みを、乗っていたバスがちょうど通って行ってるのに気付いたんだよ。
U:へー! それはすごいね。たまたまなの? N:うん、その経路を俺が選んだのは本当に偶然なんだけどね。
「あの本に載っている人たちはこんな景色を見ていたんだなあ」と思ったら感動しちゃって。 U:それが今回のアルバムの「フリーダムライダー」につながって行くわけか。
でもそうやって自身のブルース体験をふんだんに詰め込んで作られたあの曲自体は、
全然ブルージーじゃないよね。 N:そうだね(笑)。 U:なんだかポール・マッカートニーを思い起こさせるような美しいメロディーで。 N:だけどさ、例えばブルースのスリー・コード展開で「メンフィスに行ったぜー」みたいなことを歌ってもどうなのかなと思って。
逆に池ちゃんの作るああいうポップなメロディーラインのほうがしっくりきたというか。 U:たしかにそうかもしれない。 N:あれ、なんか厨房からものすごく煙が上がってるけど大丈夫? 火事じゃない? U:カバブでも焼いてるんじゃないかな。あ、料理が来始めたよ。アルバムの話もまだまだ聞きたいけど、食べちゃおうか。
新アルバムについてもっと詳しく知りたい人のためには、崇くんのサイトにあるロングインタビューのリンクとか貼っとくから。 N:もうそれでいいよ(笑)。そんなことよりこれは何!?
店員さん:マサラドーサです。 N:えー、すごいね! 大きい! 丸くて細長くて、ちょっとジグモの巣みたいだけど。 U:マサラドーサをジグモの巣に例えた人は世界初じゃないかな。 N:とりあえずちぎって食べてみよう。いただきまーす。
……あ、これは生地の味もいいねえ! U:まあ、生地を楽しむ食べ物だからね。 N:そうなんだ(笑)。この辺がちょっと膨らんでるけど、何か入ってるの? U:マサラ、と呼ばれるジャガイモのカレーみたいのが包まれてる。うん、ここのマサラドーサおいしいな。 N:俺、これ好きだわー。ユザーンはこういう店をどうやって見つけるのかな。何かカレー連絡網みたいなのがあるの?
U:さすがに連絡網はないけど、カレー好きの友達がたまに情報をくれたりはするね。 店員さん:こちら、ラム・チョップです。 N:うわー、来たねー! なんだこれ。昭和の時代に見かけたアイロンみたいな形してるね。 U:崇くんは、例え上手なのか例え下手なのかよくわからないところがあるよね。 N:香りもいいなー。これ、本当にいっちゃっていいの? U:存分にかぶりついちゃってください。 N:じゃあ最初はレモンとかもしぼらずプレーンに……。んー! んー!!
めっちゃめちゃうまいよこれ! U:でしょ? ちょうどいいミディアム・レアに焼き上げられてて、
ジューシーで。 N:んー! U:もう「んー!」しか言わなくなっちゃってるな。 N:あー驚いた。すごいねこれは。
この角のほうの、ちょっとカリカリした部分とかも
味が凝縮されてる感じがして好きだな。
あ、皿に散らばってるコゲた香辛料をつまむだけでもうまいね!
これを集めて、おにぎりの具にしてもいいんじゃないかな。 U:おにぎりの具に合うかどうかは微妙だけど、
ラムチョップを気に入ってもらえたみたいでよかったよ。
あと、この店はチャパティもおいしいの。
日本には本格的なチャパティがメニューにあるインド料理屋さんが少ないんだよね。ナンばっかりで。 N:ナンとチャパティってどう違うの? U:ナンは小麦粉を練って発酵させたものをタンドーリ釜で焼くんだけど、チャパティは全粒粉を発酵させずにフライパンみたいので焼く感じ。
ナンのほうがフカフカしてて甘みがあるね。でも、カレーと一緒に食べるにはチャパティのほうが合うと俺は思う。 N:チャパティ、久しく食べてないなー。 U:インドに行ったときに出てこなかった? N:あっちでは米ばっかり食べてた。でも俺が小さいころ、母親がチャパティにハマってたっていう時期があって。 U:どんな時期だよ(笑)。 N:何がきっかけだったのかわからないけどチャパティ、チャパティってしょっちゅう言っててさ、当時の俺には言葉の響きが楽しくて、「お母さん、チャパティってなに?」って聞いた覚えがある。 U:全粒粉をこねて焼いてたのかな。 N:たしか紀伊国屋で出来合いのを買ってきてたよ。
だからさ、きちんと手作りされた焼きたてのリアル・チャパティをこれから食べられるのが楽しみだね。
あれ、またうまそうなのが来た。これは何?
U:ゴビ65っていう、揚げたカリフラワーをスパイシーに味付けした料理。 N:うわ、おいしいー。本当にこれカリフラワー? イモみたいなホクホクした食感がある。ところで、このゴビ65の “65” ってどういう意味があるの? U:俺が聞きたいぐらいだね。(※ 南インドの人気レストランがこの料理の元となる
“チキン65” を1965年に開発したからだとか、そのレストランのメニューのなかで
65番目の料理だとか諸説あるそうです) 店員さん:お待たせしましたー。 U:いっせいにカレーが登場したね! ざっと説明するとこれがサンバルっていう野菜カレーで、こっちがマラバール・フィッシュカレー。こっちがエビのカレーで、あれ、ケララ地方のフィッシュカレーもあるね。魚は2種類も頼んでなかったけど、まあいいか。なんか大パーティーみたいになってきたね。 N:そしてこれがチャパティ? 母親が出してくれてたのと全然ちがうな。本当のチャパティはこうだったんだ……うん、ナンよりも優しい感じの味だね。ナンだと、すぐお腹いっぱいになっちゃう気がするし。 U:それにしても、やっぱりこの店はカレーもおいしいな。崇くんはどう? N:うーん、なんていうか、酸味に対しての探究心がすごい。料理にさ、これほどの酸味を出していこうとはなかなか普通はならないんじゃないかな。
U:えっと、率直に言うと酸っぱいってこと? N:そう、酸っぱい(笑)。もちろんおいしいんだけど、こんなに酸味が効いてるカレーを
食べたのは初めてだからちょっとビックリした。 U:南インドにはタマリンドを入れて酸味を加えた料理が多いんだよね。 N:タマリンドか。やっぱり今回も、俺の心の中にある味の格納庫に新しい調味料が
追加された感じ。 U:前回は “心のキッチンに置かれてる調味料の棚” って言ってたよね(笑)。
南インド料理屋って来るの初めて? N:東京駅の近くの店に行ったことがある。あそこなんだっけ、ラタトゥイユ、みたいな。 U:うん、ダバインディアのことだろうね。ところで、いつの間にか崇くんが
ものすごい発汗量になってるけど大丈夫? N:ここのカレーは辛みが蓄積するタイプのやつなのかな。
最初はそんなに辛さを感じなかったんだけど、じわーっと効いてきてる。 U:なんか息まで荒くなってきてるね。どれがそんなに辛いんだろう。 N:この野菜のやつじゃないかな……。とんでもなく汗が出てきた。 U:サンバルが辛いのか。今日頼んだカレーの中では、俺はこれが一番おいしいと思ったけどな。いやあ、さすがにお腹いっぱいになってきたね。崇くんはどの料理が好みだった? N:どれもおいしかったけど、黄色いほうの魚カレーがココナッツの香りもして俺は好き。でも、今日はやっぱりラム・チョップでしょ! U:ですよねー。俺、ここのラム・チョップを食べるたびにいつも「1個じゃ足りないな」と思う。
これを2個と生ビールだけ、という注文をいつかしてみたいんだよ。 N:それ最高だね! なんでやったことないの? U:つい栄養バランスとかを考えちゃってさ。 N:じゃあ今度そのコースをやってみようよ。2個のラム・チョップを食べ切ったうえで
「2個はやっぱりヘビーだったな」ということを確認したい(笑)。 ハナレグミ 永積 崇(ex. SUPER BUTTER DOG)によるソロユニット。
2002年に1stシングル『家族の風景』、1stアルバム『音タイム』をリリース。
2005年9月に小金井公園で開催されたワンマン・フリー・ライブ「hana-uta fes.」には約2万人の観衆が集結した。2009年には4年半ぶりの4thアルバム『あいのわ』をリリース。
ツアーファイナルである日本武道館公演では、約1万人の観客を圧倒するステージを披露する。
2011年には5thアルバム『オアシス』、2013年には初のカバーアルバム『だれそかれそ』をそれぞれリリースした。2015年8月、4年ぶりとなる待望のニューアルバム『What are you looking for』をリリース。
その深く温かい声と抜群の歌唱力を持って多くのファンから熱い支持を得ている。
http://www.hanaregumi.jp/